2016年08月30日
2016年5月の買い付けのお話し…
5月のロンドンは6月程ではないけど気持ちの良い天気に恵まれる日がある。
今日も素晴らしい天気の一日だった。
早朝からのポートベロー、その後のアンティークマーケット巡りも、全て快晴で、少し肌寒いけど気持ち良く過ごせた。
毎日のように雨が降るロンドンでは貴重な1日だった。
そして素晴らしいアンティークとの出会いも沢山あった。
その日の夜、ドールコレクターのベルと会う約束をしていてホテルを19時前に出た。
今はサマータイムでまだ昼間のような明るさ。
夜の9時前ぐらいまで明るい。
ビクトリア駅までは徒歩10分以内で到着する。
ブライトンからビクトリア駅までは、ほぼ1時間で到着するので、ベルもそろそろ到着する。
ベルは明日のドールショウに出掛けるため、今夜はロンドン市内の友人の家に泊まる予定で、それならビクトリア駅で夕食を一緒にしよう、と誘ってきた。
そして見せたい人形も、もちろんあると。
僕はあまり夜は出歩きたくないので、それならドールショウで見せて欲しいと電話で話したけど、ドールショウなら人目につくし、貴方に人形を譲る所を見られるとまずい人もいる、と言った。
あの子に売るなら私に譲って!などとケンカになるらしい。
僕には分からないが様々な事情があるみたい…
ロンドンはヨーロッパでは治安が良い方だけど、夜はいくらサマータイムで明るくても、夜は夜で、夜に動き出す闇の世界がある。
治安の良い日本でもやはり暗くなると犯罪も多くなる。
僕が住んでいる神戸も、洋館から徒歩10分前後の場所に三宮、元町の繁華街があるが、新聞に強盗、恐喝、ひったくり、傷害事件の記事を読むと、時間はだいたい深夜がほとんど。
やはり夜に出歩くと怖い目に合う確率が高い。
ここはロンドンなので、さらに確率が上がり、夜9時以降は本当に危ない。
パリは更にもっと危なくなる。
今までも何度も運良く回避出来たけど、一歩間違えれば…というギリギリセーフの状態だった。
ホテル周辺のレストラン界隈は大丈夫だけど、少し離れるとやはり怖い場所もある。
去年にアンティーク買い付け物語ツアーを、6月に初めて開催して、約10人程で渡英し無事に楽しい旅行が出来て一安心だったが、危険なので、自由行動は禁物との注意もなんのその、怖さ知らずで、知らない間に早朝に出かけたり、遠くまで散歩に女性だけで行っていたりと、本当に奇跡の無事の帰還だった。
日本と同じような感覚で行動していると大変な事態を招くのが海外での旅先。
毎晩のミーティングでも危険な事を話すと、坂井さんは怖がらす為にそんなありえない恐ろしい話をしてるのでは?と言い出す始末…
僕は実際に起こった話をしているのに、やはり実際に怖い目に合わないと分からないのが人間なんだなと思った。
ビクトリア駅まで歩きながら、そんな時間を思い出し、本当に何も起こらなくて良かった、と改めて感じて駅の中へ歩く。
待ち合わせ場所には、珍しくベルが先に到着していた。
久しぶりの再会に人目も気にせずに大きくハグとホッペにキスをされる。
そしてお話し好きなので、一方的に話し出す。
あまりの勢いに、黙ってずっと頷いていると、アンダースタンド?と聞いてくる。
こちらが割って話す間も無いのに、いつも言うセリフだ。
理解している、と言っても、じゃあ何を話した?と聞いてくるので、タチが悪い。
少し内容を話すと、分かっていたんだな、とまた話し出す。
そしてまたしばらくすると、アンダースタンド?…
これが30分程続くとようやく落ち着いてくる。
そして僕も今の状態や、日本円が少し良くなった話など、こちらの話をし終わると、ベルは大きなトランクから箱を出した。
以前にスリーブリッジの家で貴方に一度見せた事のあるブリュよ!と言って箱を開けると、小さくて美しいブリュが出てきた。
小さいのにブリュらしい顔で素晴らしい!と感動した事を覚えている。
確か3年程前だ。
沢山の犬達と戯れながら見せてくれたのでヒヤヒヤしながら…
そしてベルは、貴方はその時にこの子が欲しいと言ってたけど、まだ私は売りたくなかったのよ、だけど娘も興味が無いから、貴方に譲るわ、と言った。
僕は価格を聞くと、確かに当時はその金額だったような気がするが、その当時は1ポンドが120円台の究極の円高だった。
今は、去年よりも少し円高だけど、それでも1ポンドは166円。
46円も違えば全然違う。
単純に計算すると120万円の物が166万円になる。
去年の買い付けツアーの時は198円だった。
過去で1番高い時は1ポンド250円の経験もある。
その事情をベルに伝えると、オーマイガッ…と顔を押さえた。
あの時に貴方に譲っていたら…
ベルは受け取るお金は同じだが、僕は高くなる。
それもブリュになるとなおさら高額なので、その差もかなり大きい。
100万以上の差が出る…
好きだけど、今回は仕方ないね…と言って断る。
小さくて珍しいので普通よりも高価な価格でベルも昔に購入しているから、余計に高い。
元々が少し安めの価格なら大丈夫だけど、相場よりも高いと、この円安では難しい。
せっかく遠くから連れて来てくれたけど、申し訳ない、と謝る。
ベルは無念そうな顔で、トランクになおす。
僕はどれだけ好きなものと出会えても、自分の設定価格があり、もちろん予算もあるが、やはり売値を考えると、出来るだけ値打ちで売りたいので、相場よりも高くは購入出来ない。
そんな時は本当に無念の瞬間だけど…
そして、その表情を続けながら、来年日本へ旅行に行きたいが何月が1番良い?と聞くので、やはり5月か11月が気候が良いと伝えると、5月に行くことになったら家に泊めて欲しい、と頼んできた。
ただ、僕も買い付けは大体、5月か11月なので重ならないように、と伝えた。
もし大丈夫なら娘と犬も一緒に行く、と笑いながら話した。
うちは大丈夫だけど、日本では犬はロンドンのように自由には出来ないと話すと、ビックリしていた。
こちらではカフェ、バー、ホテルなど犬が自由な場所も多い。
それなら連れて行かない方が良いね、とがっかりしていた。
観光出来る所が限られてくるし、ワンちゃんも長いフライトが大変なので、絶対にその方が良いと思う。
そんな話をしながら時計を見るともう10時を過ぎていた。
明日の朝も早いし、そろそろ帰らないと危ないし、また明日、ドールショウで会いましょう、と言うと、そうね、とレストランの席を立つ。
友人の家にはタクシーで行くと言うのでタクシー乗り場まで送って、タクシーに乗る前にまたキスとハグ。
こちらの人は本当に大変だ…
送り届けると逆方向に向かい急ぎ足でホテルへ戻る。
さすがに真っ暗になっていて人通りはあるが、やはり景色は変わっている。
ホテルが見えてくる信号を渡ると、後ろから誰かが走ってきた。
振り返るとその男は僕に声をかけてきた、地図を片手に、ハイドパークはどこですか?と道を聞いて来た。
こんな夜遅くに公園の道を聞くのは怪しすぎる。
僕は警戒して、たすき掛けしているカバンをしっかりと握りしめながら、男にこの後ろをずっと行けば良い、と言うと、横の道路に車が停まった。
そして車から大きな男が降りて来て、胸のポケットから手帳を取り出し、見せながら、ポリスだ!お前達は2人組の仲間か?と聞いて来た。
違う!と僕が言うと地図を持っていた男は後ろへダッシュで逃げて行った。
僕は車の中の気配をみると、中に2・3人の姿を確認した。
これはマズイ…と思い、ポリスだと言う男がこちらに近づいて身体に触る距離に来た瞬間にヒザ蹴りをして、ダッシュでホテルへと走った。
捕まったら終わりだ!と全力で駈け出す。
ホテルは見えている場所だが約80メートルはある。
僕は高校時代50メートルを5秒台で走った快足を飛ばし、とにかく全速力で走った。
そしてホテルへ着くと扉を開けて滑り込んだ。
いつもいる、守衛の若い男性がハローと声をかけてきた。
息が切れている僕を見て、大丈夫か?と言ったので、もし誰かが尋ねて来たら部屋の電話をかけて来てとだけ話して部屋に入った。
もし、本当にポリスならホテルへ来るだろう。
でも偽ポリスならホテルへは入って来れないはずだ、と冷静に判断していた。
本当に間に合って良かった。
あのまま車に乗せられていたりしたら、今頃は何処かへ連れて行かれてどうなっていたか…
とっさに膝蹴りをしたけど、もうそれしか無いタイミングだった…
身体を掴まれたら、大男なのでどうしようも無い…
高校野球を終えた後に、学校に日本拳法と言う部活があり、同じクラスの友人が強くて、回し蹴りと膝蹴りを習った事があったけど、その経験がこんな時に生きるなんて…
今回はスタッフも連れて来ていて、ホテルで1人で居たし、僕があのままホテルに帰れなくなっていたら、1人で路頭に迷うだろう。
本当に危なかった。
他の男が車から出てきていれば完全に逃げられ無かっただろう。
地図の男は仲間なのかどうかわからないけど、ほんの1分も経っていない間にこんな怖いドラマがあるとは…
様々な事を思い出しながら、本当に良かった、と安堵していく。
15分が経っても電話は無いし、誰も尋ねてこない。
やはり偽ポリスだった。
いつも、過ごしている慣れたホテルの前の道での出来事。
100回程渡英していてもこんな目に合うのだから、やはり油断は出来ないし、夜は絶対に危ない。
改めて、買い付けツアーも何も無くて良かった、と胸をなでおろす。
今まで昼間にナイフを突きつけられてiPhoneを渡して助かったり、パリで拳銃を持った男に追いかけられかけたりと何度か危ない目にあったけど、今回が1番怖い思いをしたし、危なかった。
これからは夜のお誘いは全部断らないと。
そして地方などから夜に戻る際はホテルの前までタクシーで戻ろうと、固く決意をする。
翌朝、何事も無かったように、夜が明け、朝食を食べて外を出ると、もちろん偽ポリスの車も無く、普段の平和な景色だった。
そしてタクシーを捕まえてドールショウへ向かう。
開店は11時だが、バイヤータイムの9時に会場に入り、ドールショウが幕を開ける。
業者は同じ時間に荷物を運び陳列している。
昨夜合ったベルも元気に来ていた。
そして、来たばかりなのに、カフェスペースで座って話をしないか?というが、僕はまだ来たばかりだから後でね、と言って断る。
そして沢山の出会いを噛み締めながらドールショウを楽しむ。
今日はパリでもトイマニアというイベントが開催されているので、いつも来るフランス人達は居ない。
ロンドンのコレクターもいつもよりも少ない。
おかげで、いつも手に入りにくい、ドールドレスや付属品が沢山買えた。
もちろん可愛い人形、ぬいぐるみ達も。
10時過ぎにベルとまた会って、カフェスペースへ行き話を聞く。
すると昨夜のブリュの話しだった。
せっかく連れて来たので、やはり貴方に託したいとの事。
でも僕は100万以上の開きがあるから難しいと断る。
ベルは、では貴方はいくらなら買える?と聞くので、ベルの価格から120万円を引いた価格を伝えると、オーマイガッと言って視線を落とす。
4年前なら120万円も下がらなかったのに…と嘆く。
でも僕からすれば、その時と同じ金額の日本円での購入となる。
半時間以上も悩み抜き、僕の売値もあるから、その価格でないと絶対に購入出来ないと話すと、観念したように、その価格で良いよ、と言った。
本当に申し訳ないけど、それでもギリギリの価格なので仕方が無い。
でも去年なら更に円安だったので、それだけ引いても不可能だった、と話すと納得していた。
改めてブリュを見ると、本当に素晴らしい。
沢山の収穫品に加えてまた荷物が増えた。
嬉しい悲鳴だ。
最後にまたひとまわりして、オークションの担当のニコラスゲイジにも、帰国後での電話入札を楽しみにしている、と挨拶を交わして、楽しいドールショウを後にする。
出口で、主催者のキャロット女史が、沢山の荷物を見て、笑顔でハッピーデイ!と声をかけてくれた。
いつも優しく、本当に素晴らしい人だ。
自分で書き上げたドールブックも連載していて、有料で販売しているのに、いつもプレゼントしてくれる。
何と言っても、無くなりかけたドールショウをブレンダから引き継ぎ、見事に復活してくれた。
規模は5分の1に小さくなったけど、素晴らしいドールショウ。
この女史がいなければ、間違い無く消滅していた。
みんな年齢も高齢なので、いつまで開催出来るか分からない。
毎回が素敵で貴重な時間。
感謝を込めてまた次回、楽しみにしています、と挨拶をした。
その時には、昨夜の恐怖の記憶も消え去り、素敵で充実した時間を楽しむ事が出来ている。
その事についても心から感謝をして沢山の荷物を抱えてタクシーを探し歩き出す。
続く…
続きはまたこちらでご紹介します。
皆さんお元気でしょうか?
僕は名古屋を終えて、次は梅田阪急のイベント準備でバタバタしています。
梅田阪急は初日の朝5時からの準備で、そのまま開店というハードなスケジュールです。
毎回の事ですが、まず阪急の入り口では30段ぐらいの階段を沢山の荷物を降ろしてからのスタートです。
改装したのに、前よりも不便になり、何の為に階段を上り下りする社員入り口にしたのか、理解不明ですね…
社員にもバリアフリーにしないと、足腰が悪くなれば辞めないといけないなんて、おかし過ぎです。
名古屋タカシマヤも階段を使用しないとダメな社員入り口です。
どちらも新しい店なので、信じられません。
構造的に仕方ないのかも知れませんが、僕が社長なら、無理をしてでも、お客様と社員も同じように、バリアフリーにして、膝が痛い、腰が痛いと苦しんでいる方も仕事が出来るようにしますね。
ひどい腰痛の経験もありますし、毎回、梅田阪急の搬入で、その階段で重たいトランクを出し入れして、古傷の膝の皿が移動して、引っかかり、しばらく元に戻らなくなります。
僕はまだ動けるからいいですが、歩くのもキツイ人は本当に大変だと思います。
お客様にも働く人にも優しいデパートになって欲しいと心から願います。
先日の梅田阪急スークのイベントも、皆さんのおかげで素晴らしいイベントとなりました。
本当にありがとうございました。
日曜日の名古屋では、深夜に降った雨でテントがつぶれるハプニングがありましたが、当日は雨も上がり、新たな出会いも沢山あり、素晴らしいイベントとなりました。
梅田阪急、名古屋でお世話になった皆さん、本当にありがとうございました。
阪急は明日から、名古屋大須観音は11月18日に次回は出店予定ですので、また皆さまとお会い出来ますのを楽しみにしています。
これからは梅田阪急、川西阪急、名古屋タカシマヤと3週連続でイベントが続きます。
本当は名古屋骨董祭もありましたが、阪急と重なり、残念ながら断念しました。
12月は必ず出店しますので、名古屋骨董祭にお越しの方は12月にお会いしましょう。
猛暑から台風のシーズンになりましたが、気象情報に気をつけて、出来る限りの対策を立てて、乗り切りましょう。
今は気象衛星がありますが、昔の人は全くそんなのが無い状態で、台風をどうやって回避したり、備えたりしたのかと、想像すると凄い事ですね…
今はあたりまえになった気象衛星。
台風の姿がはっきりと分かります。
本当にありがたいですね。
ただ地震だけは、余地は難しく、歴史しか分かりません。
いつ起きてもおかしく無いと備えるしかありません。
自然災害の多い日本ですので、皆さんの無事を心から願っています。
それではまた。
最近、自分で髪を切る事が楽しくなった店長でした☆
今までは前髪だけたまに切っていましたけど、最近は後ろも横も、全て自分で切れるようになりました(^ ^)
以前に、俳優の阿部寛さんがテレビで、長い間、美容室には行かずに、自分で散髪をすると話していましたが、真似をしてやってみると意外と出来ました。
これからはずっと自分で髪を切り続けて行こうと思います。
いつでもどこでも、24時間思い立ったら切れますので、とても便利ですし楽です。
洗面所で簡単に出来ますよ。
皆さんもチャレンジしてみて下さい。
僕は適当で大丈夫なので出来るのかもですが…