僕が27歳の頃の話・・・
今日のロンドンは朝から雨。
日曜日なので、古着を探しにカムデンロックへと向かって地下鉄で出かける。
ロンドン中の若者が集まっているんじゃないかと思うほど沢山の若者で賑わう、ロンドン最大の蚤の市。
朝8時なのでまだ人は少ない。
駅を出ると1本道で市へとつながっている。
途中でタコヤキとカタカナで書かれた看板を出して、
タコヤキを売っているイギリス人がいるが見かけはどうみてもマフィンにソースをかけているみたい。
橋を渡ると道路沿いに沢山の店が出ている。
ジュエリーやバッグなどの露店がせっせと準備をしている。
橋を渡り左側の方に入っていくと、迷路のように広い敷地の中に店がいりくんでいる。
3000店舗はあると地球のあるきかたにも書いてあったけどほんとうに数えきれないぐらい。
その中でも左奥の洞窟のようになったブースが僕は大好きだ。
洞窟が8か所ぐらいあり、その中に30店舗ぐらいずつの店が
暗闇の中で古着、アクセサリー、ぬいぐるみ、雑貨などを出している。
昔のアニメで、はじめにんげんギャートルズというのがあり、原始生活の話に出てくる洞窟の家みたいで入るだけでも楽しくなる。
一番最初の洞窟に着くと、準備をしているおじいさんが
古そうなトランクの中から荷物を出そうとして、
トランクの持ち手がちぎれてひっくり返し、銀のナイフ、スプーンなどがこぼれ落ちた。
オーマイガッ!と言いながら、ひらうのかなと思ったらそのままにして、5ポンドという札をその上に置いた・・・
なんて大胆な陳列・・
あまりに面白いのでそのスプーン達を見てみるとほとんどがビクトリア時代の古い刻印などが入った素敵なものばかり。
1本千円で安いので気に入った柄を8本見つけて、おじいさんに手渡すと、
40ポンドだけどあと2本おまけしてあげるよ、と言ってくれた。
均一価格の場合は安いのであまり値引きなどはないことが多いのにまけてくれたのは、
トランクをひっくり返したにもかかわらず、その陳列を受け入れた僕へのサービスなんだろう。
お金を払い新聞紙に無造作にくるんだスプーンを受け取ると茶目っ気たっぷりにウインクをしてくれた。
日本ではおじいさんにウインクをされたことなどないのでびっくりした。
やはりこの洞窟は面白い。
奥の方に進むとレースなどを飾っている女性がいた。
生成りの色の素敵なショールが目に入る。
いくらですか?と聞くと100ポンドと言われた。
2万円は高い。
蚤の市だからと言って全てが安いわけではない。
2万円なら高級アンティーク街などでも買える価格なので、サンキューと言って更に奥へと進む。
一番奥になると外のあかりがほとんど届かないのでかなり暗い。
小さな電灯だけで見えにくいが、1920年から60年頃のワンピースが沢山並んでいる。
一番手前のアールデコ様式の茶色のドレスがとても素敵なので価格を聞くと、
私はここの人ではありません、と椅子に座っていた女性に言われた。
すると表からホットドッグを抱えたお兄さんが戻って来た。
ソーリーと言いながらそのホットドッグを女性に渡そうとすると、
ノーサンキュー!とかなり怒った口調で断っていた。
そして、これでごまかそうとしてもダメよ!と言い放ち受け取らずに椅子に座っている。
お兄さんに価格を聞くと、妻の物なので・・と座っている女性を見る。
なんだ私の店なんだ・・
ご機嫌斜めで知らないと言ったのか・・
仕方ない次の洞窟に行こう、と出ようとすると女性がいつのまにかホットドッグを食べながら、
30ポンドでいいわよ、とにっこり笑って言う。
6千円なら安いのでいただきますと言うと何事もなかったかのように綺麗にたたんで袋に入れてくれた。
いつも喧嘩をしてはホットドッグで仲直りをしているんだろう。
面白い洞窟の店。
それにしてもあのホットドッグは美味しそうだった。
お兄さんにどこで売っているのかを聞くと、歩いて15分はかかる屋台で売っているよと教えてくれた。
なにせカムデンロックは広い。
洞窟を制覇したら買いに行こう。
あれだけ怒っていても一口食べると機嫌が直るホットドッグなんだから、美味しいに違いない・・・
お腹がキューッと鳴りながら次の洞窟へと向かう。
続く・・・