2010年11月の話しの続き。
ジュエリーを沢山買えてヘザーの所へ向かう。
ドアを開けるとパートナーの男性と愛犬のチェリーが迎えてくれた。
奥の椅子にヘザーが座っていた。
半年ぶりの再開で挨拶を交わしていると、横でチェリーが尻尾をブルンブルン回して喜んでいる。
横のソファにとても可愛いスタイナーが座っていた。
そしてその隣には真っ白なゴーディエが座ってこちらを見ていた。
初期のタイプだと思うが、ほんとうに真っ白の焼きをしている。
価格を聞き、早速分けてもらう。
ヘザーとはいつも長話にはならないが、梱包をしていると、
とても可愛いトリステがいるのよ・・・とトランクを開けてくれる。
ただダメージがあるのよ・・・と言って手渡してくれた。
すると本当に綺麗で可愛い顔をしている。
ただ目の上にクラックがあり、頭の後ろにはヘアラインがある。
価格を聞くと150万程する。
これだけのダメージでこの価格なら当然買えない。
ヘザーは素晴らしい子なので、ほんとにもったいないわ・・・と残念そうに話す。
梱包を終えお金を払い、またねーと挨拶をして別れる。
明日はいよいよオークションの下見会がある。
そこでもリストの中にトリステがいた。
セーラーの服を着ていてとても可愛く写真に出ていた。
ただ実物を見ないと陶質などが分からないので、
明日の下見会で気になる15体のお人形の候補のチェックをしにいく。
手に取り、納得いくまで確認することが出来るので安心だ。
ただ沢山のディーラーやコレクターが来るので、見せてもらうのもひと苦労だ。
ルーペを取り出し20分以上も細かくチェックする人もいる。
見たい人形と重なっていたりすると列が出来ることもある。
時間は3時までと決まっているので昔は時間切れになったこともある・・・
そういう不安はあるが、オークション自体は何回経験しても緊張するし、
ドキドキして心臓の存在感が際立つ。
もちろん楽しみの緊張なので、毎回こんな経験が出来て嬉しく感謝して挑んでいる。
今から想像するだけで緊張して鼓動が速くなる。
タクシーに乗り込み、ホテルへと帰る。
翌日、いよいよ下見会当日だが、
今日はホテル近くのロイヤルホールでアンティークフェアが開催される。
歩いてテクテクと向かうが、道中も下見会で頭がいっぱいだ。
少し早く到着したが、もう100人以上は並んでいる。
こちらの方のアンティークへの情熱はほんとうに凄いものがある。
毎日色んな所で開催されているが、
この人達は毎日方々に出向きアンティークを求めて飛び回っている。
でも僕も情熱だけは負けてはいけないと、気合いを入れる。
会場がオープンした頃には僕の後ろにも100人以上が並んでいた・・
さぁ、争奪戦の始まりだ!
ここは来る度に出店業者が増えている。
ホテルフェアも無くなり、バーモンジーマーケットも縮小したことで、
ここが便利な立地にあるので空きが無いほどの店が増えた。
ホテルから歩いてこれるので僕にはありがたい。
昨日の朝に会ったスコットが笑顔で挨拶をしてきた。
今日も新しく入荷したのがあるよ、と見せてくれた。
好みじゃないと断ると、また次回にねーと明るく答えてくれた。
ネアカのスコットだ。
今日のフェアではなかなか好みの物がない・・
150件は出ているのに、こんな時もある。
でも無理に買う必要はない。
本当に好きなものしかいらないし、ここは経費も0円だ。
正確には入場料1ポンド、137円は払ったけど・・・。
楽しいウォーキングと考えればとても贅沢なウォーキングだ。
ジックリと一回りして1時間は経った。
さぁ、今からオークションに向かおう♬
早足になり外へ飛び出す。
会場に到着すると、沢山の人が並んでいた。
ブレンダ、デービッドなどの人形屋さん達が揃っている。
僕の姿を見ると苦笑いを浮かべて挨拶をしてきた。
中に入るとガラスケースに並べられた150体以上の人形達が広いスペースに広げられていた。
一番手前はドールハウス。
写真では大きさを感じなかったが、実際にはかなり大きい。
2点いいなと思ってチェックしてサイズも図っていたが、これは無理だ・・・
そしてベアコーナーに向かう。
絶対に買おうと思っていたパンダボックスを探す。
メリーソートロット、という題名で出ていた、パンダ、熊、犬2匹のまとめ出し。
僕はメリーソートのぬいぐるみが好きだが、
パンダコパンダのお父さんのようなパンダは見たことがない。
他のぬいぐるみ達も可愛いのでこのセットは競っても負けないつもりでいる。
ダンボールに入れられているパンダ達を見つけた。
実物をみてもとても可愛い。
オークションブックに買うぞと、印をつける。
今回は欲しいシュタイフなどは無かったが、双子のベアが出ていた。
ブックには写真に出ていない子もいるのでこれは知らなかった・・・
洋服もピエロで小さいが双子なので可愛い。
予想価格をみるとなんと、60万円・・・
可愛いけどこれは無理だ・・・
そしていよいよドールコーナーに向かう。
まずは115センチのドイツの子を見せてもらう。
プロフェッショナルの人に、ビックガール!と指名すると、
これは重すぎて持てないからこちらに来て、と言われる。
そして手伝いに行くとほんとに重たいし、顔は僕と同じぐらいの大きさだ。
なかなかこんなに大きな子はいないし顔も綺麗だ。
この子もチェックを入れる。
奥では行列が出来ていた。
誰だろう?と覗き込むと、トリステだ!
やはり今回の一番人気だった・・
遠くから見ていても顔が浮いている・・
ライバルは多いが是非とも欲しい。
気を取り直してエミールジュモーを出してもらう。
小さいがやはり可愛い。
洋服も素敵だし意思の強そうな顔をしている。
これもチェックを入れる。
次はユニスフランスのオリジナルBOXの子を見せてもらう。
淡いピンクのネルのような洋服を来ていて凄く可愛い!
当然チェックだ。
大きなジュモーの箱入りの子が、3体出ていたので、それを順番に見せてもらう。
この子達は写真では良いと思っていたが、可愛いけどありふれている。
70センチでオリジナルBOXの子はなかなかいないので、少し残念・・
予算も限られている。
だからトビキリの子だけを頑張って買おう。
他も5点ほどチェックを入れる。
奥の列を見てみるがなかなかトリステにはたどり着けない・・
ミニチュアの子達を見に行くが、今回は好きな顔の子がいない。
ファッションドールコーナーに向かうとシモンヌの綺麗な人形がいた。
顔は綺麗なのにドレスの傷みがひどい・・
ファッションドールは衣装の変えが無いし、人形だけが可愛くても難しい。
奥をもう一度見るとトリステの列があと3人になっていた。
今だ!足早に向かう。
ワクワクしながら並んで時計を見るとあと40分になっていた・・
夢中で見ていたらあっという間に2時間以上も経っていたのだ・・・
でも何とか全てチェック出来たし、あとはトリステだけ。
ほんとにオークションは楽しい♬
チェックしているともう自分の物になったような錯覚に陥る。
いつもそうだが、これには気をつけないといけない。
負けたときのショックが大きいから・・
過去にもどれだけ負けてガッカリしてきたか・・
いよいよ順番が回って来た♬
トリステを手に取る。
スポットライトも当たっているが、透き通るような綺麗な顔をしている。
目元も憂があり、文句無しだ。
今までも4体出会いがあって日本に連れて来たが、全て80センチ以上の大きい子ばかり。
約60センチというサイズは初めてだが、この子にサイズは全く関係ない。
存在感も際立っている。
僕が最後だと安心して見ていたら、後ろに真っ白なタキシードを着た初老の男性が並んだ。
帽子も真っ白で、オークションの関係者もみんな挨拶をしている。
見るからに貴族のような装いに少し焦りがでてきた。
きっと有名なドールコレクターなんだ・・・
僕は初めて見たが、こんな人と競っても勝てそうにない気がする。
そのままトリステをその男性に手渡す。
オーサンキュー!と、とても性格も良い。
金持ちケンカせず・・と言う言葉があるが正にそんな感じだ。
この人に負けるなら仕方ないか・・・と弱気になる。
まだオークションは明日なんだ。
弱気を振り払い会場を出て行く。
どちらにしてもパンダだけはあの貴族にもまけないだろう。
そう言い聞かせてパンダの顔を思い出すと前向きになって来た。
このときはまさか、波瀾のオークションになるとは考えもしないで・・・
続く