アンティーク買い付け物語ツアーの実現を記念して、今までの買い付け物語を、店長日記から抜粋してまとめました♬ 順次ご紹介しますので、是非ご覧下さい♬
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☆アンティーク買い付け物語☆第28話☆

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2002年頃の話・・・

今日のロンドンはとても天気が良く快晴だ。

だからと言ってこのまま晴天が夕方まで続くことはあまりないので、
折りたたみ傘をカバンに入れてボンドストリートを歩き、サザビーズへと向かう。

次回のドールオークションのカタログが発売しているので、いち早く手に入れようとワクワクして歩く。

オークションの扉を開けると、ビクトリア期の絵画が並んでいた。

今日は絵画の下見会だ。

自分の家にはどう考えても入らない7.8メーターもあるような大きい絵画などがゆったりと並び、
肖像画の貴婦人がこちらを向いて微笑んでいる。

日本家屋にはご縁がない絵画達を目にするだけでもお値打ちだ。などと心の中でつぶやく。

正面左側にカタログの見本が置いてある。

早速ドールカタログを手に取り、表紙をみると可愛い学校の教室に先生と生徒の人形が並んでいる。

素朴なフェルトの人形だが表紙を飾るということはすごい価格のセットに違いない。

中を開き表紙の説明を確認する。

なんとシュタイフの1920年頃のスクールセットで、
教室、椅子と机、先生、生徒など全て揃っていてとても可愛い。

価格は£5000〜£8000となっている。

シュタイフは、クマやぬいぐるみだけではなく、人形も昔に作っていたんだ・・・

欲しいのは山々だけど、予算がとても足りない。

ビスクドールと、ジュエリーだけで手一杯だ。

関心しながら、ページをめくっていく。


するとさすがはサザビーズ。ジュモーはもちろん、ブリュも2体も出ている。

その中でも一人特に目を引く印象的な子がいた。

文章を読んでみると、サークルドットブリュ、ハンドブロークン、ヘッド・レストレイションとある。

いわゆる手は割れて、頭は直しがあると言うことだ。

でも凄い目力で潤いのある表情をしている。

他のページを見てもカタログに写真が載っている子の中ではこの子以外は目に入らない。

写真に出ているのは3分の1ほどなので、来週にある下見会での出会いが楽しみだ♪

フロントでカタログを購入してまたボンドストリートへと歩き出す。

すぐ近くにアンティークマーケットがあるので、そこへ向かう。

途中でウインドーショッピングで賑わう通りを横切るが、
このあたりはロンドンのファッションの発信元といわれる場所だけに、洗練された店舗が並んでいる。

全て100年以上の建物に、オレンジやピンクなどの
カラフルな色の店舗のディスプレイが自然にマッチしていて不思議な感じがする。

その通りを横切るとこれまた立派な建物のアンティークマーケットが見えてくる。

1階と地下に約100店舗近くのアンティークショップが集まり、
世界から業者や、コレクターが集うアンティーク好きの聖地みたいな所だ。

価格はオークションや、蚤の市などからすると割高で高価な物が多いが、手っ取り早く良いものを見たい人や、買いたい人にはもってこいの場所だ。

僕はその中でもお値打ちにしてくれる仲良しの業者さんに会いに行く。

今日は地下から入ろう。

地下に両替があり、日本円を手数料無しでポンドに換えてくれるので、とても良心的で便利な所がある。

両替を終え地下の一番奥の店舗で以前、地方のアンティークフェアーで出合ったイギリス人の夫人に出会う。

挨拶を交わしていると、横から白い衣装に身をかくしたアラブの人が現れた。

婦人は今は忙しいから後にして、と話すが時間が無いので今にして欲しいと返答している。


婦人は困った顔をして僕を見るが、良いですよと合図をすると、アラブ人から話を聞きだした。


すると黒いカバンの中から箱を取り出して、丁寧に包まれた紙の中から素晴らしい輝きを見せるブローチが現れた・・・

これはお祖父さんの形見で、こちらに引っ越してきて持ってきたが、
資金が必要なので買ってくれないか?と言い出した。

婦人は手に取りルーペを取り出して細かくチェックを始めた。

婦人の店の扱うアイテムは小振りなジュエリーばかりなので、
20センチ以上はあるこのブローチは合わないのではないかと、心の中で思っていた。

それは僕の心の中での希望と期待の願望でもあった。

アラブ人が取り出した瞬間に一目ぼれしていたのだ・・・

おそらくローズカットであろう、ダイアモンドと深緑のエメラルドとのコントラストが素晴らしく、
何と言っても大きいサイズで目玉商品になる。

固唾を呑んで婦人のチェックを眺めていると、婦人と目が合った・・・

ニコッと笑みをかけてくれて、あなたは欲しいの?と聞いてきた。


きっと顔に思いっきり欲しいと書いてるぐらいのバレバレの表情をしていたんだろう・・

でもここで欲しいと言うと交渉の邪魔になると思い、ニコッと笑ってごまかした。

婦人はアラブ人にハウマッチ?と聞く。

すると£5000は欲しい、と言った。

婦人は£5000でオークションで売れても、写真撮影やカタログ代、
手数料などを引かれると£4000になるし、そこまで上がる保障もないわね、と話す。

アラブ人はそれなら£4000でどうだと言った。

私はハッキリ言ってそれならいらない。£3000なら考えてもいいわよ。
と言うとアラブ人は困った顔をして黙り込んだ・・

沈黙の中も僕は心の中で£4000でも欲しい!と叫んでいた。

婦人はその僕の顔をみて、この日本人のディーラーならきっと£3500で考えてくれるかもよ!と話し出した。

あなたはこんな大きなものが好きだったよね?と言ってきたのでドキドキしながら裏返った声でイエス!と言い、
べリービューティフルと思わず言うと、無表情だったアラブ人がにこりと笑い、現金はあるのか?と聞いてきた。

あわててイエスプリーズと言うと婦人がまだこの人は売ると言ってないよと笑う。

アラブ人は、このブローチはあなたに譲ります、と言い僕に手渡す。

手に取ると意外と重みがあり、しっかりした作りだ。

近くで見ても素敵な色合いに変わりはなく、惚れ込むばかりだ・・・

婦人に、あなたの店に売りに来たのに、本当に僕が買ってもいいんですか?と念をおす。


婦人はたまたまこんな場面にあなたが居合わせたのは、ラッキーだったのよ、と言ってくれた。

僕は安心してお金を手渡すと、口数の少ないアラブ人は足早に立ち去った。

こんな買い方をしたのは初めてだ。

婦人は本当は私なら£3000で粘って、それでいいですと言うまでいらないと言い、
買い取りが成立すると、自分のアイテムではないから知り合いの業者に£3300以上で転売するのよと話してくれた。

そしてその業者は海外のディーラーに£4000以上で売るのよと言ってくれた。

そうなると£5000近くになり、アラブ人の希望価格に近くなる。

と言うことは、アラブ人の値ふみはかなり正確だということだ・・・すごい!

やはり遺言なのか、勉強したのかわからないがきっちりと相場を調べてマーケットにやってきたんだと関心した。

さすがオープンなロンドンアンティーク市場だ。

ロンドンでは一般客もコレクターも業者も、同じオークションで売買ができる。

だから相場がきっちりとあり、情報もオープンなので、
薄利で売りさばいたりしないと、暴利を稼いでいることもすぐにわかる。

まさにそれを物語る出会いだった。

もう、今日はこれでいい・・・

婦人にお礼を言い、ティーかコーヒーはいらないかと聞くと、
アラブ人の気が変わらないうちにここから離れなさいと、おどけた表情で話した。

懐の大きい婦人だ・・・

サンキューと言って、本当に素早い足取りでマーケットを後にした。

アラブ人が戻ってくる前に・・・



続く
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