アンティーク買い付け物語ツアーの実現を記念して、今までの買い付け物語を、店長日記から抜粋してまとめました♬ 順次ご紹介しますので、是非ご覧下さい♬
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☆アンティーク買い付け物語☆第60話☆

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2012年5月の買い付けの話の続き・・・・



サザビーズでのジュエリー下見会では痛みを忘れるような素敵な出会いはなかった・・

仕方ないが、最近はオークションでもなかなか不作で、珍しいものは出なくなった。

こう考えると個人的に譲ってくれる友人がヨーロッパにいることは貴重だし、
感謝しきれないけど、裏返せばその方達がいなければ、素敵な物と出会う確率が少なくなるという危機感がある・・

来る度に蚤の市は少なくなり、ディーラーも減り、出会う機会が少なくなってきている。

これは人形もジュエリーも同じ兆候だ。

そんな不安が頭をよぎると、痛みがドーンと襲ってきた・・

もう今日はこれで限界かも・・・

タクシーを探し、ホテルへ戻ろうとしたら携帯が鳴った。

電話に出るとベルだった。

具合はどう?と聞いてきたのでベリーバッド!と返すと、ソーリィ・・可哀想に・・

だけどメールは見てくれた?と言うので、ホテルでしかメールは見れないから今はわからないよ、と言うと、
前に話していた友達が今から夜まで家にいるからどうかしら?と連絡があったけどどうする?とのこと。

今はタクシーに乗っているから運転手に行き先を伝えてくれて、行ってくれるなら頑張って行くよ、と伝えた。

ロンドンタクシーは遠方はお断り!と言うのが多い。

日本とは真逆のシステム。

空港など帰りを保証する場所以外はほとんど断られる。

日本なら神戸から大阪などと言うと喜んで行ってくれる。

リンダが代わってと言うので、運転手に電話に出るように頼むと、その辺に止めるので待って、と言われた。

ロンドンでも運転中の携帯は厳しく取締がある。

横に止めて、電話を渡すと大きな声で場所を何度も聞きなおしている。

ベルも車では友人の所に行かないだろうから説明がしにくいのかな?

もし断られても帰って寝るし、行けたら新たな出会いの縁が出来るので、運に任せて目をつぶる。

運転手が住所を聞いて、スマートフォンで検索しているみたいだ。

するとオー、ハムステッド!と言って電話を僕に渡し、レッツ・ゴー!とウインクして出発した。

電話に出るともう切れていた・・

名前も何も知らないのに・・自分の用事が済むとプツリと切る・・・

日本もロンドンも、高齢の方は同じような習慣がある。

昔、僕のおばあちゃんは耳が遠く、自分の言いたいことを話し終われば、
あのなーと言いかけているのにブチッ、と良く切られていた・・世界共通だ。

何とかなるかな。

運転手に任せて再び目を閉じる。

するとハローハロー!大きな声で目が覚めた。

すぐに深い眠りについていたみたいで到着したようだ。

起きたら顔の痛みでビックリした。

少し動くと激痛が走る。もう限界が近いかも・・

外を見ると大きな木が沢山茂っていて、閑静な住宅街のようだ。

それも大きな家ばかり。

すぐ横の真っ白な洋館から婦人が出てきた。

階段を下りながら笑みを浮べている。

運転手にお金を払うと、約70ポンドだった。

ヒースロー空港と同じか少し近い距離だとわかる。

とすると45分は眠っていたんだ・・・

激痛はするけどしんどさはそのおかげでましな気もする。

外に出ると、笑みを浮かべた婦人が、ミスターサカイ?と声をかけてくれた。

イエス、と言うと握手をしてきて、初めましてと挨拶をしてくれた。

初めて会うのにまたほっぺを合わせる恥ずかしいキスだ・・

きっとベルから色々と聞いていて僕の印象などがわかっていたんだろう。

僕はなんにも聞いてないけど。

カモンカモン、と導かれ後についていく。

カモンカモンの言い方もベルそっくり・・・

中に入ると大きなリビングに大きなソファが真ん中にドンと置かれている。

間違いなく僕の家には入らないだろう。

7人は座れる大きさだ。

そのソファに人形が座っている。

すると激しい動きの生き物が僕に飛びついて来た・・・・

ビックリしてそのまま抱き上げるとブルブル震えて興奮しているスコッチ・テリアだった。

婦人は、まだパピーだから激しくてごめんなさい、と笑いながら話した。

来月から調教に出すから今度会えるときはおとなしくなっていますよ、と言って僕が抱いているテリアの頭をなでる。

名前はチャーリーよ、と教えてくれたのでチャーリーと声をかけると僕の顔をベロベロ舐めだした・・・痛い・・

特に一番の激痛の鼻周辺を激しく・・

我慢できずに下ろすと、ピョンピョンと飛び跳ねて抱っこしろとアピール。
しんどいからごめんね。

婦人は大きなソファの場所へと案内してくれて、横の一人がけのソファに座った。
チャーリーもピョンと膝の上に来た。

大きなソファには、ゴーティエのファッション、べべゴーティエ、スタイナー、ジュモーなどが可愛く座っている。

どの子も可愛い。

何か飲む?と言われたので何でも大丈夫です、と言うと紅茶を入れてくれた。

素敵なピンクのティーカップに注がれた紅茶をチャーリーにこぼさないように飲むと、とても美味しい。

時間的にはアフタヌーンティーだ。

婦人が、私は今年で82歳になり、今まで集めていた人形たちを少しずつ、
自分が生きている間に次の世代へと引き渡そうと決意したのよ、と話しだした。

ベルが仲の良いグッドディーラーがいるから紹介してあげる、とあなたの事を聞いたのよ。

前から話をきいていたけど、思った通りの人だったわ。
あなたなら安心して私が愛してきた子達を預ける事が出来ます、と言ってくれた。

話などほとんどしていないのに、チャーリーに好かれたのが大きいのかな。

でもそんな事を言ってくれると凄く嬉しい。

僕は本当に人に恵まれている。

こうして人から人へと紹介されたりなど、自然と広がってきた。

婦人が、顔色が悪いけど大丈夫?と聞いてくれたので大丈夫ではないんです、と言った。

具合が悪いのにこんなに遠くへ呼んでごめんなさい、と言ったので、
具合は悪いけど、ここに来れたことを嬉しく思っています、と伝えたら、涙を流して喜んでくれた。

とにかく今日は早く戻ったほうがいいわね、上の寝室にも沢山人形がいるのだけど、
今日はここにいる子達を世に出そうと思ったの。好きな子はいますか?

ここに来た時からみていたし、紅茶を頂きながらもチェックしていて、
みんな可愛いので、傷さえ無くて、高くなければみんな頂きます。

オーミスターサカイ、あなたは噂通り決断が早いのね、
この子達は1960年頃にパリのオークションで手に入れて、ずっとこの家で大切にしてきたの。

価格を聞くとビックリするぐらい安い。

昔は豊富にあったし、価格もお手頃で買えたから、昔にコレクションしたものはお安くお譲りします。

私は長い間この子達と過ごせて幸せものよ!とまた泣きながら話した。

確かにその通り。50年もの間コレクション出来るというのは、
経済的にも、価値観的にも、美意識的にも優れていないとありえない。

僕が生まれる前に手に入れて、約半世紀もの間、コレクションされて愛されてきた子達を僕が日本に連れて行く。

やはりアンティークは沢山の愛情を注がれてきたからこそ、今の時代まで生きてこられるんだと確信した。

愛されてきた大切なアンティーク達を次に愛してもらえる人へとつなぐ僕の使命。

愛から愛へ・・・

美輪明宏さんが、世の中が愛で溢れかえれば戦争も無くなり素敵な世の中になります。
愛さえあれば・・・と訴えて愛の讃歌をいつも音楽会で歌ってくれる。

まさにアンティークの世界も愛あればこその世界。

タクシーを呼んでもらい、お金を払い終え、梱包をしていると一人ひとりに、オーベイビー、と泣きながらお別れをする婦人。

今度はいつロンドンへ?

11月に元気にきます、と言うと必ず来てね、プロミス、プロミス、と何度も言ってくれた。


大きな袋を抱えてタクシーに荷物を入れると、チャーリーを抱きながら婦人が見送ってくれた。

婦人が近づき、またほっぺをあわせるキス。

チャーリーも鼻息が荒く、顔をペロリ。

タクシーに乘り、バイバイと手を振り、出発した時、2階の出窓に人形らしき姿が見えた。

また今度会いに来るから待っててね、と心の中で声をかける。

後ろを見るとチャーリーと婦人がずっと見てくれている。

また必ず来ますねー。


住宅街をタクシーが駆け抜ける。






完結編  続きです・・・



翌日、痛さで眠れずに月曜日になり、ようやく病院に行ける日になった。

早速電話すると留守電になっていた。

そしてそこに電話番号を伝えると、ドクターが電話を直接かけ直します、とのこと。

日本ではありえない・・

やはり9時になるまでは連絡はつかないのかな?と考えていると携帯が鳴った。

電話に出ると、ほんとうにドクターからの電話だった。

症状を伝えると、僕は往診もしているが、その分だと、CT、レントゲンなどの検査が必要なのでこちらに来て下さい。

もちろんそのつもりです、と言うと、いいですか今から指示する通りにしてくださいね?
まずホテルは何処ですか?

ビクトリアです。

OK!
ではまず、その症状なら電車では来れないと思うので、9時40分にホテルを出てタクシーに乗って下さい。

今すぐ出ても通勤渋滞で遅くなるので、
9時40分なら解消されていてスムーズに来れ、病院には10時30分に到着するでしょう。

そして検査に30分、診察を含め11時半には終了すると言う流れです。

わかりましたか?

わかりました。それではそれまで、1時間ホテルに待機してお伺いします。ありがとうございました。と電話を切った。

なんてテキパキハキハキしたドクターなんだろう・・・
圧倒されるほど言葉も強く、信頼出来る感じがする。

とにかく1時間の我慢だ。
2時間後には病状もハッキリして今とは状況が全くかわるだろう・・・

ピピピッと体温計が鳴って、確認すると39.8度・・・
痛いし高熱・・だけど食欲はあるので朝ごはんも全て食べれるし、内臓はいたって快調なのが救いだ。

横になって待とう・・・

眠たいけど痛みが激しく眠れない。

鼻の痛みから目の間ぐらいに痛さが移動してきた。

鏡を見ると下の鼻と、目の間の幅が同じになっている。

高校生の時に野球のボールが鼻を直撃してヒビが入り大怪我をした時と同じような腫れだ・・・
腫れが酷く反対側が見えないほどになり、電車に乗って通学するのが恥ずかしかった時を思い出す。

さっき留守電を聞いた時、英語のアナウンスで、年中無休で往診も致します、と言っていた。

土日は休みだから週明けまで我慢したけど、もっと早く電話すれば良かった・・・

いろんな事を考えていると、時間が来た。

急ごうとするけど、早く動くとズキズキと痛むのでソーっと立ち上がり、ゆっくりとホテルを出て、電話で聞いた住所と道を運転手に伝える。

するとハムステッド!と言って出発した。

まさか、昨日のご婦人の近くなのかな?

それなら昨日行けたのに・・今更言っても仕方ないけどガッカリとした気持ちになる。

メディカルセンターが行き先なので、運転手が大丈夫?と優しく聞いてくれた。

ちょっと横にならしてもらいます、と言ってごろりと横になった。

ロンドンタクシーは広いので助かる。

ユラユラ揺られていると痛いけど眠たくなってきてまた寝てしまった・・

エクスキューズミー!と声をかけられて起きると、目の前にメディカルセンターがあった。

ありがとう!と言ってチップもはずみ、お金を渡すとお大事に、と言われた。

病院に入ると、中は結構大きい。

そしてドクターも4人ほどいるみたいで名前が書いてある。

受付で名前を告げると、医院長!と内線で呼んでくれた。

症状は聞いていますので、突き当りの医院長の部屋にノックして入って下さい、と言われた。

素早く対応してくれて助かった。もうフラフラだ・・・

コンコンと叩くと、カモン!と声が聞こえた。

入ると頭が良さそうで切れ者と言う感じの50代ほどの先生が座っていた。

僕の顔を見て、オーマイガー!と言いながら鼻をつまんできた。

僕は飛び上がりそうな痛みで、思わず日本語で痛い!と叫んだ。

腫れている場所が悪いから、上でCT検査をしましょう、と言って二階へ行った。

15分ぐらいかけ、入念に撮影をして再び診察室へ。

撮った写真をみて、先生は、あと2日遅れていたら、脳神経を犯され、おかしくなっていましたよ。と笑いながら話した。

僕はおかしいけど、あなたには大変な事態になるところでした。

改めて言われると意味がわかった。

副鼻腔炎の菌が粘膜の下に入り込み顔全体に広がりつつあり、かなりの重症です。

なので高熱がでるし、大変になるんです。

そして仕事のことやいつ帰る予定など細かい話をしたら、それでは本当なら入院ですが、
あなたが帰国までの4日間、毎日ここに通い、キツイ薬を処方するので、
それらを指示通りに飲んでキッチリとしてくれるなら何とかしましょう!と言ってくれた。

なんてハッキリとした先生なんだろう・・・日本では考えられない・・・

その中には日本では認可されていないキツイ薬もあります。
子宮の中の菌などを殺すキツイ抗生物質です。

抗生物質・・・日本に来る前に出血性大腸炎になって大変だったのですが、抗生物質ならまた、ひどい下痢になるんでしょうか?

日本での大変だった話しをすると、先生は、日本のように中途半端な抗生物質ではありません。

少しはゆるくはなると思いますが、全ての腸内細菌が死滅します。

ですので悪玉菌が生き残る心配はありません。

日本では腸内に悪玉菌だけが残り、それに攻撃されて出血したんでしょう。

先生はあっさりと話した・・・

僕はネットで調べて、内視鏡検査で空気が入ると劇的に改善することがある、との情報を見つけて、
病院に駆け込んだのですが、そんな事はほとんどない!と取り合ってくれず、
とりあえず出血がひどいので内視鏡検査をしましょう、として頂き、それで一晩で改善しました・・・
それでも翌日に電話しても、あれだけのひどい腸は見たことがないから、
他の病気が潜んでいる可能性があるので、明日にでも内視鏡検査を、と言われました。

すると先生は、日本の医療の考え方はイギリスが1800年台の時の改定前の時と代わっていません。

イギリスでも自分だけの経験、カルテの開示などほとんどが今の日本の現状と同じでした。

今は全てオープンな状態ですので、何処の病院に行っても、ほぼ同じ事を言われますし、あやふやな回答などありえません。

それに患者さんの意見なども全て聞く耳を持っていますので、今回のことも、
僕はすぐに原因がわかりましたが、もしわからなくて患者さんの調べた情報があれば、すぐに自分で調べ取り入れるでしょう。

あなたの行動と決断がなければ今頃ロンドには来れなかったですね。と微笑んだ。

それでは話は戻りますが、処方する薬は、抗生物質が3種類、胃腸薬、鼻の粘膜に噴霧するスプレー、
そして解熱剤、鎮痛剤、これらを全て空腹時に飲んで下さい。

それでないと薬が効きません。8時間おきと決めて3回飲んで、
まずは1週間飲み、そして帰国直前にまた違う薬を出すか、帰国後に日本の病院に行って下さい。

先生!日本に帰ればすぐに仕事ですし、出来れば先生の薬だけで治るようにお願いします。

すると先生は、では必ず毎朝大変ですがここまで通って下さい。

そして抗生物質は飲み続けると身体の中に抗体が出来ますので、症状の状態を見ていきながら薬を変えていきましょう。

おそらく2週間、もしくは3週間で完治出来るでしょう。
と心強い言葉を言ってくれた。

でもキツイ薬なので、最初はここで飲んで行って下さい。

もし合わない場合はぶっ飛び、大変なことになる可能性もあります、と苦笑いを浮かべながら話した。

僕は、これにかけるしかありませんし、大丈夫です。

先生のようなドクターがいるなんてビックリしました・・

日本ではこちらから色々と聞かないと話してくれないし、あやふやな返答が多くて、風邪、神経痛などと言われることが多いです。

先生は、それが日本のワビサビのいいところでもあるし、
全てが悪いとは言えませんが、こちらはイエスかノーしかありません。

なるほど、でも僕は先生のようなドクターが日本にいると、
順番待ちで大変なことになるぐらいの人気になると思います。
先生と出会えて本当に嬉しいです。

先生は笑みを浮かべながら、とにかく早く薬を飲むほうがいいので、外の薬局で薬を受け取り飲んでくださいね。

明日も同じ時間に出発して来て下さい。

先生本当にありがとうございました、と頭を下げて外に出ると、沢山の患者さんが待っていた。

こちらは完全予約制になっているみたいだけど、僕の症状をわかっていて急患として割り込んでくれたんだ・・・

こんな先生なら予約で一杯になるだろう。

ソファに座って待っていると、アラブ系の60代ぐらいの薬剤師の人に、ミスターサカイ!と呼ばれた。

メガネをかけて、愛想の良い笑顔で手招きしてくれた。

英語で処方の仕方を教えてくれるけど、ゼスチャーがかなりオーバーでとてもわかり易い。

特に鼻に噴霧するスプレーの説明は、大きな深呼吸をして鼻に入れる入れ方を身体全体を使い説明してくれた。

これなら子供でもわかる。

そして先生の指示通り、水をもらい、薬剤師の前で薬を飲む。

飲んでも全く問題ない。

拒否反応を起こせば飲んだ瞬間におかしくなると聞いたので、薬剤師の方も親指を立ててOK!と笑ってくれた。

これできっと治る!自分でも手応えを感じ、手続きを全て済ませタクシーを呼んでもらう。

ほんとに最高の先生と出会えた。

まだかなり痛いけど確実に改善するに違いない。

心が軽くなりながら、ボンドストリートへ!と出してもらう。

そして、ロンドン最終日。

毎日通って大変だったけど、いよいよ通院も最後だ。

痛みも引き、熱も下がり、鼻の腫れはまだあるし、先生が押さえると激痛が走るが、普通にしていると全く問題もない。

下痢もほとんど無く、先生のいう通りになっている。

あれから毎日病院に行き、それからコレクター、オークションなどに行く流れが出来、
早朝の蚤の市などは、病院に行く前に行き、ホテルに戻り朝食を食べてから、病院という生活。

行くときはロンドンタクシー。帰りは病院が手配する、小さい車の個人的なタクシー。

ロンドン市内なら何処へ行くにも25ポンド約3千円と格安だ。

診察室に入ると、最後までキチンと通いましたね、と笑顔で褒めてくれた。

そしてまた鼻をつまむ。相変わらず顔をしかめるほど痛い。

先生はなかなかしぶとい菌なんですよ。

でもこの菌も空気には弱いので、大腸のように空気を入れればすぐに死にますが、皮下には無理なのでね、と笑う。

では薬をまずは、今ある分はキッチリと飲みきって下さい。

そしてその後は、今日新たに出す薬に全て変えましょう。

解熱剤と鎮痛剤は症状がないならやめましょう。

新たな薬は、そうですねー、6月2日にピタっと止めて下さい。

それ以上薬を飲むと危険です。

もしその時点で改善されていないようなら、病院に行って下さい。

大丈夫なら完治と言うことになります。

先生本当にありがとうございました、とお礼を言うと、
相変わらずのキッパリハッキリとした口調でごお大事に!と言ってくれた。

薬局に行くと、今日は若いアラブ系のお兄さんが処方してくれて、
説明してくれるが、大きなゼスチャーなどなく、キッチリと説明だけしてくれた。

受付でタクシーを呼んでもらい、タクシーに乗ると、とても陽気な運転手で、何処から来た?と聞いてきた。

ジャパン、と言うとベリービューティフル!&ベリーカインドネスピープル!と褒めてくれた。

僕はアフガニスタンなんだよ、と言うと少しくらい表情になり、君は戻るんだね?僕は帰れないよ、と話した。

内戦状態になり、テロがテロを呼ぶ酷い状態なのは新聞などで読んでいる。
やはり大変なんだ・・

運転手は、君はホスピタルから乗ったけど、具合が悪いのか?と聞いてくれた。

もうだいぶ良くなって、今日が最後で今夜日本に帰ります。

すると何時間かかる?と言うので13時間です、と言うと大変だなーとビックリする。

僕は、今は慣れたし寝るか、映画を観て過ごすとすぐに到着します、と言った。

いつも居眠りしているので景色は見てなかったけど、アップダウンの多い丘の上にこのあたりの街はあるんだ。

人形の婦人の家の近くの道も見えてきた。

病院から10分ぐらいの所にある。

今回はこの地域に呼ばれてきたんだな・・
人形が僕を助けてくれたんだ、きっと・・・

話をしながら頭に浮かんだ。
そして渡英するときに観た映画を想い出した。

マット・デイモン主演のダートモーアズー。
日本題名は幸せへの奇跡だったかな・・

イギリス郊外にあった閉鎖した動物園を、妻を亡くし、
子供たちとの辛い生活を変えようと考えたお父さんが購入し、
再建問題、思春期の子供達との葛藤など、大変な思いをしながら、
皆んなで力を合わせ、素敵な動物園を復活させるという実話を元にした映画。

子供の時の夢が飼育係だったので、動物園を買う、という説明をみたとき、
僕も欲しい!と単純に思いながらみたら、
僕には到底無理なぐらいの苦労、お金、沢山の人々との関わりなど現実は問題の山。

だけど最後は奇跡が起こり、開園こぎつけたときは感動して泣いてしまった。

今もその動物園に家族で住み続け、人気を保っていると言うので、いつか行ってみたい。

運転手にその話をすると、そこは僕は知らないけど、
ボンドストリートに行くなら、リージェント・パークの素敵な道を通ってあげるよ!と言ってくれた。

眠気も醒め、景色を見ながら、今回の渡英前、渡英後の大変な日々を思い出した。
渡英前は大変だったけど、何とか飛行機に乘り、無事に発てたと思ったら機内での鼻の激痛。そして発熱。

その後の辛い日々のロンドン。

そしてその酷い僕の状態を見て、親切にしてくた友人たち。

パリに行く予定をキャンセルしたら、パリから逆に来てくれた友人。

そして素晴らしいドクターとの出会い。

病気になるとわかる、普段の健康の尊さ。

そして弱っている時にわかる、周りの人の優しさ。

その一瞬一瞬がよみがえり、泣きそうになってきた。

そのどれも全て、お世話になった人たちがいて、
誰が欠けても僕は無事に来ることが出来なかったし、こんな体調でいつも以上のアンティーク達との出会いもありえなかった。

そしてこうして最終日を迎えることも・・・

外の景色を見ながら過ごしていたら、森の中に入っていった。
初めて通る道だ。

運転手がここがビューティフルロードだよ!と教えてくれた。

もう少し行ったら君はビックリするよ!とおどけながら話している。

充分に綺麗な道だし、左側には素敵な建物も沢山ある。

歴史的建造物のような素晴らしい建物。

すると急にその建物が無くなり、再び木々が立ち並んできた。

前の方を見ると、LONDON ZOOという看板が見えてきた。

クラシックな看板で、親子連れなどが歩いている。

運転手がスピードを緩めてくれると、左側から大きな首が伸びてきた。


キリンだ!

道路に出そうなぐらいに伸びた可愛いキリンの目と合った。

まつ毛が長く、日本のキリンと違うように見える。

中のオリの前には幼稚園児の団体が、外に向いているキリンに向かって、ハロー!と叫んでいる。

キリンを過ぎるとダチョウや、カピパラなども見えたような気がした。

感動していると運転手がビックリしただろう!と笑う。

僕は最後の日に素敵なプレゼントをありがとう!とお礼を言った。

ノープロブレム!と言いながら、ロンドンズーを通り抜ける。

最後の最後に素敵なプレゼントももらい、今回の渡英は、動物園の映画に始まり、動物園で終わった。

動物たちは人間を癒してくれる。

動物好きの僕には最高のフィナーレ。

感動したまま、リージェント・パークを出て、大都会、ボンドストリートを目指し、小さいタクシーは駆け抜ける・・・・


終わり
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