2012年5月の買い付けのお話・・・
しんどい中、タクシーで蚤の市へ向かう。
体調とは反比例して、綺麗な朝日が差し込んできた。
キラキラ光りロンドンの古い街並みを新鮮な朝日が綺麗に照らす。
頭や顔が痛く熱もあるけど、気持ちの良い朝に少し救われる。
そしていつものように、小さくなった蚤の市に到着。
最近はすぐに見終わるけど、今回はスペインから売りに来るディーラーの女性が久しぶりに出店していた。
大規模なバーモンジーマーケット時代にお会いして以来なので、何年ぶりだろう・・・
挨拶をすると久しぶりにビックリしたけど、こんなに小規模になっててびっくりしたわ!と
とまどいながらも、素敵なジュエリーを見せてくれる。
ちょうど今から出す所だったので、順番にカバンの中から1点1点見せてくれて、そのままケースに陳列していく。
すると5点目に、すごく綺麗なルビーのリングが出てきた。
大きくて真っ赤なルビーに、リボンの装飾をして、リボンにはダイアが散りばめられている。
価格を聞くと、これはロシアの19世紀の物で、素晴らしいルビーよ!と嬉しそうに話す。
価格はやはりこれだけ大きなルビーなのでそこそこする。
だけど空前の円高なので計算するとお買い得。
それをキープしてまだ出てくるジュエリーを見せてもらう。
以前の大規模な市の時代は、このディーラーは大人気で、
いつも20人ほどが店を囲み、なかなか独占して見れなく、
出遅れると朝一のディーラータイムを終えて、10時頃にしか見れない時もあった・・・
そう考えれば今は独占で見られる・・ただこの状態ではもう来ないだろう・・
次に目が入ったのは素晴らしいバタフライのブローチ・・
大きくて、ダイア、サファイア、ルビー、ガーネットが朝日に照らされ今にも空に飛びそう・・
この人のセンスはとても素晴らしく、
セレクトしてくるジュエリーは洗練された物ばかりで、いつも見ている途中で圧倒される。
このバタフライはフレンチのアールデコよ!と価格も教えてくれた。
こちらも計算すると買える値段だったのでキープ。
そして茶色いかなり昔の素敵な箱が出てきた・・
中には何が入っているのだろう・・息を呑んで開けるのを待つ。
ふたを開けると、素晴らしいシードパールのネックレスが綺麗に収まっている。
それも状態がとても良い。
僕が手に取り後ろを確認しようとすると、パーフェクトよ!と笑顔をくれた。
そしてこれもキープ。
まさかの大豊作に痛みを忘れている自分がいた・・
やはり素晴らしい物にはそれだけの魅力とパワーがあるんだ。
素晴らしいものに触れると身体の中から様々な物質が出て、神経を和らげるのだろう。
次にはまた素晴らしい箱が出てきた・・
蓋を開けるとミニアチュールの素敵な絵画が描かれていて、
フレームには素晴らしい宝石が取り囲み、色合いが何とも言えない淡い色で統一されている。
箱から取り出すと、ブローチ、ペンダントになっている。
これもオリジナルボックスに収まっている。
100年以上も前に生まれたジュエリーが、時を経て、
その当時の箱に収まり、現代に市場に出てきて僕が手に取っている・・
この出会いは本当に奇跡だ。
それも毎週開いている蚤の市に、半年ぶりに来た僕と、
何年かぶりにスペインから来たディーラーと出会えた。
やはり強いご縁がないと出会えない。
天気も出会いも、僕の体調とはほんとに反比例して素晴らしい出会いが待っていてくれた。
これ以上ない僕の処方箋になる。
感動して痛みを忘れている。
その後も3点ほど分けてもらい、次はいつ会えるかな?と言うと、
こうやって会えたのだから、きっとまた会えるよ!と飛び切りの笑顔をくれた。
きっとそうだろう・・
スペインは今は大変な状態になっているのに、その話は一切出さない、
ポジティブな彼女に更に感動しながら、握手をして別れた。
きっとまた会えますように・・・手を握りながら願いを込めた。
そしてタクシーを探し、すっかり高くなった綺麗なお日様の光を浴びながら車に乗り込みホテルへと出発した・・・・
続きは次回にお送りします・・・