2011年5月の買い付けの話の続き・・・
シュタイフディスプレイがいよいよ画面に映りスタートする。
予想価格は500〜800ポンド。
日本円で10万前後。
1,5メートルはある大きさで、
動物達も沢山ついていて電動式でかわいく動くことを考えるとその価格で終わればほんとに値打ちだ。
小さければ絶対欲しいけど、この大きさなら配送するだけで20万から30万円はかかる・・・
するといくら安く買えても結局高くなる・・
なのであきらめがつくぐらい高くなることを願う。
スタートしたにも関わらず会場の人は誰も手をあげない・・
まさか・・・
ハンマープライスの女性が手元のモニターを見て入札のBID用紙をチェックする。
500ポンド!と声を掛けるが誰も無反応・・・
そのまま入札の人の最低価格での落札が決まった・・・
日本円で7万円・・
安すぎる・・手数料を入れても10万円。
でもあの大きさなら家の大きいイギリス人の方でも遠慮したのかな・・
僕なら寝る場所が狭くなっても飾りたい。
ここが日本なら・・
僕の近くでシュタイフディスプレイのヒヨコが相変わらず猫の顔をバシバシとたたいている。
もうすぐビスクドールが始まるので気合を入れなおす。
ビスクドールの前にビクトリアンドールがある。
木でできたウッドドールで古いものは1700年の物もある。
表紙にはグーグリーと古そうな人形が出ている。
ビスクドールファンには理解できないだろうけど、やはり奥の深いコレクターがいるイギリスでは評価が高い。
僕も全く興味がないので、この時は完全にリラックスして見届けられる。
可愛いワンちゃんを連れたドSの男性が、急にソワソワしだした。
僕は初めてみるが、もしかしたらこの古い人形を買いにきたのか・・
そして一番評価の高い木の人形が出てきた。
予想価格が15000ポンド(200万円)となっているので、今回のオークションでの最高価格の評価だ。
説明を始めてスタートする。
僕の予想が当たり、リードを持ったまま男性が右手をあげた。
電話のニコラスケイジがライバルのようで大きい声で今の価格を伝えるとすぐに右手をあげた。
会場には敵はいないようで、男性と電話の勝負になる。
千ポンド単位で競りあがるのでみんなドヨメキのあと静寂になってきた。
15000はゆうに超え3万、4万と競り上がる。
1千万の世界に突入だ・・
その間もワンちゃんのリードは持ったままで表情を変えずに右手をあげ続ける。
5万ポンドでピタリと止まり、男性が札を掲げる。
自分が落札できた嬉しさも出さず、カタログに書き込んでいる。
だけど今までにない動きをして、下にしゃがんだと思ったら、
リンダの催眠術で眠っていたわんちゃんを抱き上げた。
しっぽを振り振りして大喜びで腕の中で甘えている。
超大物を買うために、精神を集中していたんだ・・・
少し見直していると、次のウッドドールも落札して、
計5体のドールを落札して、ビスクドールが始まる前に会場から出て行った。
コレクターか専門業者、それとも美術館などに卸すバイヤーか・・・
とにかく古い人形だけを落とし姿を消した。
でもジンクスか集中かはわからないが、
あれだけ可愛くて従順なわんちゃんなら、最初から抱いていても落札できると僕は思う。
さぁいよいよビスクドールだ。
いきなりエミールジュモーから始まる。
ヘアラインがあるので安い予想価格だと思っていたら4000ポンドとなっている。
写真では普通だと思っていたのに、実物はそれはそれは綺麗な顔をしていて、サイズも珍しい8号。
安ければ是非買いたいと考え直した。
1000ポンドからスタートしたので、すぐに565番の札を掲げる。
すると1500で僕を指さし会場の雰囲気が止まった・・
こんなに安く買えるなんて・・と舞い上がりそうになった途端、
少し遅れて電話の入札のニコラスケイジが手を挙げ2000ポンドになった。
会場には敵はいないが電話参加の人が相手だ。
すかさず手を挙げると2500ポンド。
次はニコラスケイジの隣の女性スタッフが手をあげ3000ポンドになる。
急いで手を上げようとしたら、ニコラスケイジが先に手をあげる。
するとまた隣の女性がまた手をあげる・・・
僕は入れなくなってしまった・・
そのやりとりが続くとついに7千ポンドを超えた。
100万を超えるなんて・・
ヘアラインがあるのに・・
そう考えている間もどんどん値が上がっている。
そしてついに1万ポンド近くまで行った・・
150万とは・・
安ければ買おうなんて全然甘かった・・
日本ならヘアラインなどはかなり価格に左右されるがヨーロッパでは関係ない。
僕がびっくりしていると、天使のヘザーが戻ってきて横に座り、
あの顔はなかなか見ない、とても上質のEJだからおかしくないわよ、と話してくれた。
確かにあんな表情のジュモーは初めてみた。
今日は色んな勉強になるオークションだ。
その後、スタイナー、ジュモー、ゴーティエ、K&R、
ユニスフランス、ケストナーなど、目標の30体は無理だったけど、20体の可愛い子を落札できた。
大満足の結果で、やはりラッキーフードの魚を食べたのも効いたかな。
地下の精算に向かうが今回は対策をしてきたのでヘザーに助けてもらわなくても大丈夫だ。
何度来ても大興奮のオークション。
今回もまた違うドラマが繰り広げられた。
時計を見ると16時半。
やはり前回の男性ハンマーなら15時半には終わっていたので、1時間も遅くなった。
でも初めての女性ハンマープライスも悪くない。
笑顔が多かったし、とてもほのぼのとしたオークションだった。
ホテルへ帰ったら全部広げて並べてみよう。
パッキングして、大荷物を抱え、タクシーに乗り込む。
さようなら、オークション会場。
また半年後にねー。
続く