僕が37歳の頃の話…
今朝のロンドンはとても青空が綺麗で、さすがはジューンブライドと言われる6月の気候だ
今日はチェルシータウンホールでアンティークフェアが開催される。
小規模だけど、100年以上前のタウンホールで、
ロンドン有数のファッション発生地のキングスロードにあり、とても人通りが多く便利な所にある。
時々前を通ると結婚式でブーケを投げる所も見た事があり、
地域の方に愛されている小さなホールで、約30店舗のアンティークディーラーが集う。
それも毎回お馴染みの店がほとんどで、僕はレース屋さん、アンティークジュエリーショップ、古着屋さんと仲が良い。
みんな高齢で、きっと昔からここのホールで店を出し続けてきたんだろう。
建物も店も歴史を感じる。
入り口で1ポンドの入場料を支払い中に入ると、
入り口すぐには版画専門店がいつものように沢山の、ビクトリアンプリントを並べている。
絵も好きなのでいつも見るけど、どうしてもかさばるので、見るだけで申し訳ないのに、店主の紳士はにこやかに挨拶をしてくれる。
メインホールに入ると、僕はすぐに右奥の小部屋に向かう。
そこには沢山のジュエリーやアクセサリーを所狭しと、女性店主の二人が並べている。
それも細かい物を無造作に並べているのに、いつも1人いるかいないかで留守にしている。
小部屋に入ると今日は女性店主がまだ陳列を頑張っていた。
スポットライトにあたっているケースを見ると、亀の綺麗なブローチがあった。
甲羅はエメラルドで目はルビー。
とてもゴージャスな亀さん。
必死で陳列していて僕に気づかなかった店主が僕とわかり、半年ぶりね!と喜んでくれた。
そして亀を見せてもらうと、足としっぽも動きとても珍しい物だった。
価格は間違いなく安いので、安心して手に取りながら他も見るけど他に好きな物は無かった。
そして価格を確認して亀を受け取ると、次回は11月にまた会いましょう、とウインクしてくれた。
小部屋を出て、中央のホールを横切り、今度は左側の小部屋&カフェスペースに向かう。
そこには沢山のレースと古着が積み上げられている。
壁際にかけられているカーテンがとても可愛くて目に入った。
近くでみると、ポストマンパッドのプリントだった。
パッドと黒猫のベスだったかな?
二人が仲良く配達しているイラストが描かれていて、色合いもとてもキュート。
二つペアであり、文字ももちろん英語でプリントしてあるので日本では手に入らないだろう。
店主にそのカーテンはいくらですか?と聞くと、
少し耳が遠いのかカーテンはない!と言い、何の用事ですか?と聞いてきた。
近寄り、これです、と指を指すと、これはクッションカバーよ、と言われた。
壁の窓のような所に貼り付けてあったのでてっきりカーテンだと思っていた。
耳が遠いのではなかった・・・
価格を聞くと1つ10ポンド。
カーテンなら2ついるけどクッションなら1つでいいかな。
1つ頂きお金を払い、隣の古着屋さんをのぞく。
藍色のとても素敵なジャケットがあり、早速着てみたら腕が入らない・・・
なかなかない素敵な色合いなのに残念・・
メインホールに戻り、一通り見るけど好きな物はない。
今回は2点だけの出会いだったけど、いつも何か素敵な物が必ずみつかるチェルシータウンホール。
雰囲気も好きだし、何といっても店主達のスローライフな対応がとても安らぐ。
ただ一度話し込むと長くなるので、最近はスローライフペースに巻き込まれないように気をつけている。
今回も3日間の滞在だし、僕には時間がない・・
でもいつか僕もここの店主のようにスローライフアンティークショップになろう。
出口を出ると道の向こう側に、デパートがあり、ショーウインドにカラフルなハンモックがディスプレイされている。
昔、沖縄でキャンプをした時に、みんなで出発前にアウトドアショップに買い出しに行き、
安いハンモックを見つけて、これで綺麗な沖縄の海を見ながら揺られて昼寝をするぞ!とハイテンションでみんなに話したら、
みんなテンションが意外に低く、へーっみたいに冷めていた・・・
でも僕はエメラルドグリーンの海の横で爽やかな潮風にふかれながらハンモックに揺られるなんて、
子供の頃にカントリーの映画か何かでみて憧れていたので、1人で喜び購入した。
そして沖縄でテントを張り終えたら、真っ先に大きい木を見つけてハンモックを縛り、
生まれて初めて揺られたときは感激の瞬間だった。
木漏れ日の中から見える青い空、キラキラ光る海、目を閉じると波の音。
そして景品でもらった枕がスピーカになり、
携帯プレーヤーをつなぐと音楽が聴ける優れものをセットして揺られるとまた素晴らしかった。
そして暑くなったら海へ泳ぎに行き、疲れたらまたハンモックで昼寝。
たった3980円でこんなに心地の良い思いが出来るなんて、購入して本当に良かった。
ところが二回目にハンモックに乗ろうと戻ると誰かが揺られていた。
アウトドアショップで、へーっとしらけていた友人が気持ち良さそうに揺れていた。
僕はすかさず、あの時はハンモックなんか買ってどうするん、
みたいな顔してたのに乗ってるやん!と嫌味を言うと、めっちゃ気持ちいい・・・と言い訳もせず降りようともしない。
買って良かったやろー?と言うと最高!と喜んでいる。
仕方ないからもう一度海にシュノーケリングで潜りに行き、
熱帯魚を鑑賞してから、また戻り、今度こそ、と見ると今度はもう1人の友達が乗っていた・・・
結局1人、1時間以内で交代というルールを決めて順番でみんなで楽しんだハンモック。
懐かしい記憶がロンドンで蘇る。
僕が購入したハンモックはロープに木枠で出来ていて、
普通の感じだけど、ここにあるのはカラフルな布製で、肌には優しそう。
僕のはロープで網網になっているから、水着で乗るとハムのようになるけど布製ならハムにはならない。
でも濡れたままではのれないなぁ…
やはり僕の方がいいな。そう思いながら左横に視線を落とすと、
チェルシーアンティークマーケットと言う看板が目に入った。
以前はアールヌーボー専門店などの高級アンティークショップなどが数店舗入っていた建物だったけど、
アンティークマーケットなどではなかったし、看板なども無かった。
新しく新設したのかな?
すぐに信号を渡り建物の階段を上がり、ガラスの扉を開けると、
とても綺麗なショーケースやシャンデリアが綺麗に輝いていた。
右側を見るととても素敵なアンティークジュエリーがウインドーに飾られていた。
やはり前とは変わっていた。
その中でもひときわ輝いている豪華なダイヤモンドのブローチがあった。
今までにもみた事がないような綺麗なデザインのブローチ。
眺めていたら、中から男性が僕に気がついて出てきた。
扉を開けた瞬間に、かなりキツイ香水の匂いが一緒に出て来た。
不快感がある匂いではないけどかなりのキツさだ。
現れた男性は毛深く、カラフルなアロハを着ていた。
眼鏡の奥の表情もとても優しく、言葉使いも英語版お姉系だ。
どれがお好みですか?
と聞いて来たので、ダイヤモンドを指差すと、どうぞ中でお見せしますと招かれた。
するともっと凄い香水の香りで満たされ、
中には同じようなアロハを着た毛深い男性が5人もいて全員でナイストゥーミーチュー!とハモってきた…
ここはおかまの館だ…
だからハイセンスなのか…
座って座ってと言われて椅子に座るとみんな満面の笑みを浮かべて優しく迎えてくれた。
最初に出て来てきてくれた男性がダイヤモンドを持って来てくれた。
どうやら彼がオーナーのようだ。
手に取ると本当に素晴らしい輝きを放っている。
それを眺めていると、背後に気配を感じて振り返ると大男達が僕の後ろにピタッと張り付いて眺めていた…
そして僕と目が合うとパチッと全員がウインク(^_-)
僕は苦笑いを返すしか無かった…
続く